青色LED材料を活かして、熱を電気に変換

High thermoelectric power factor of high-mobility two-dimensional electron gas [Advanced Science 4, 1700696 (2017) DOI: 10.1002/advs.201700696]

GaN2DEG

青色発光ダイオードの材料である窒化ガリウム(GaN)からなる半導体の電子の動き易さを活かした半導体二次元電子ガスが、既に実用化されている熱電変換材料より2~6倍も大きな熱電変換出力因子を示すことを発見しました。

一般に、半導体GaNの導電率を高めるためには、Siなどの不純物を混ぜ込みます。この時、SiはGaN結晶中でイオン化し、電気伝導を担う伝導電子が生じます。このような半導体GaNに温度差を与えると、熱起電力が発生し、外部回路に接続することで電子が高温側から低温側に流れますが、イオン化したSiが電子の流れを妨げるため、結果的にあまり導電率は高められません。つまり、一般的な半導体GaNでは大きな熱電出力は得られません。

一方、半導体二次元電子ガスの場合は、不純物を混ぜ込むのではなく、静電気によってGaNの中の電子を薄い領域に寄せ集めることで導電率を高めます。不純物を一切含まないので、二次元電子ガスの電子は高速で動くことができ、大きな熱電出力を示します。半導体GaN二次元電子ガスの熱電変換出力因子は最大で約9 mW m-1 K-2であり、一般的な半導体GaN(1 mW m-1 K-2以下)の10倍以上であり、既に実用化されている最先端の熱電変換材料(1.5~4 mW m-1 K-2)の2~6倍に相当します。

この研究成果は、半導体二次元電子ガスのように高い電子移動度を維持しながら電子濃度を制御できる構造が、熱電材料の高性能化の鍵であることを明確に示すものです。今回使用したGaNの半導体二次元電子ガスは、非常に高価な単結晶基板の上にしか作製できないことに加え、熱伝導率が大きいことから、そのまま実用化に繋がるものではありませんが、本モデルは、実用化を控えた熱電材料を高性能化するための材料設計指針を与えると期待されます。

本研究成果は、北海道大学 量子集積エレクトロニクス研究センターの橋詰 保 教授、韓国・成均館大学校の金 聖雄 教授、産業技術総合研究所の山本 淳 研究グループ長らとの共同研究によって得られました。