研究内容

-石ころの素材で役に立つモノを創ります-

私達の研究室では、従来、セラミックスとして扱われてきた機能性酸化物を素材として、原子レベルで平坦な表面を有する高品質薄膜を作製し、機能性酸化物の持つ真のポテンシャルを最大限引き出し、世の中で役に立つデバイスの開発を目指しています。具体的には、「光・電気・磁気記憶デバイス」、「熱電変換材料」、「スピントロニクスデバイス」の開発を行っています。そのために必要な高品質薄膜を作製するための「特殊なエピタキシャル薄膜成長方法」の開発も行っています。

熱電変換材料

透明な酸化物熱電変換デバイス、温度差を電気に変換します

After “Giant Thermoelectric Seebeck coefficient of a Two-dimensional Electron Gas in SrTiO3”, Nature Mater. 6, 129–134 (2007).

電界誘起二次元電子ガス-巨大熱電能(Seebeck係数)を示します

“Unusually large enhancement of thermopower in an electric field induced two-dimensional electron gas”, Adv. Mater. 24, 740-744 (2012).

thermoelectric

熱を電力に変える「ゼーベック効果」と、電流で冷やす「ペルチェ効果」に代表される、金属や半導体などの導体が示す、熱⇔電気変換効果は、総称して「熱電効果」と呼ばれています。あまり知られていませんが、熱電効果は、熱源さえあれば電力を取り出せるという特長を利用した惑星探査機の動力源や、振動・騒音を発生しない冷却が可能という特長を利用した小型冷蔵庫として実用化されています。私達の研究室では、金属酸化物の熱電特性を長年にわたって研究してきました [H. Ohta et al., Inorganic Chemistry 47, 8429 (2008)]。希少・毒性元素を含まず、化学的・熱的に安定な金属酸化物で高い変換性能を示すものが見つかれば、例えば、工場や発電所、自動車などから排出される熱を電力に変換できるようになるからです。現在は、超精密な薄膜合成技術を武器として、極薄の金属酸化物が示す巨大な熱電効果の起源を解き明かし、真に実用的な変換性能を示す酸化物熱電材料の実現を目指しています。(太田裕道)

総説

[1] H. Ohta, Mater. Today 10, 44 (2007). [2] H. Ohta et al., Inorg. Chem. 47, 8429 (2008). [3] 太田裕道, 応用物理 第81巻 9号 740 (2012). [4] H. Ohta, J. Mater. Sci. 48, 2797 (2013).

原著論文

[1] S. Ohta, H. Ohta et al., J. Appl. Phys. 97, 034106 (2005). [2] S. Ohta, H. Ohta et al., Appl. Phys. Lett. 87, 092108 (2005). [3] H. Ohta et al., Nature Mater. 6, 129 (2007). [4] Y. Mune, H. Ohta et al., Appl. Phys. Lett. 91, 192105 (2007). [5] K-H. Lee et al., Appl. Phys. Express 1, 015007 (2008). [6] W-S. Choi, H. Ohta et al., Phys. Rev. B 82, 024301 (2010). [5] H. Ohta et al., Nature Commun. 1, 118 (2010). [6] H. Ohta et al., Adv. Mater. 24, 740 (2012). [7] W-S. Choi, H. Ohta et al., Adv. Mater. 26, 6701 (2014). [8] W. S. Choi, H. Ohta et al., Adv. Funct. Mater. 25, 799 (2015).

新聞・テレビ

[1]「人工ダイヤの原料+熱=発電、名大などのグループ発見」、朝日新聞(2007年1月22日)
[2]「普及材料から熱電変換素子、発電性能2倍、名大など研究チーム開発」、読売新聞(2007年1月22日)
[3]「工場や車の廃熱→電気に変換材料低コスト製造-名大など、水を使う技術開発」、中日新聞(2010年11月17日)
[4]「熱を電気に。新材料」、NHKおはよう日本(2010年11月17日)

他多数

光・電気・磁気記憶デバイス

無色透明な絶縁体から、濃青色金属に、スイッチ一つで切り替えます

“A Transparent Electrochromic Metal-Insulator Switching Device with Three-Terminal Transistor Geometry”, Scientific Reports 6, 25819 (2016).

 

水(H+ / OH)を使って、機能性酸化物の光・電気・磁気物性を自由自在に操ります

After “Field-induced water electrolysis switches an oxide semiconductor from an insulator to a metal”, Nature Communications 1, 118 (2010).

 electrochemicalmodulation

遷移金属酸化物の多くは、酸素過剰/欠損やプロトン化などの非化学量論組成とすることにより、その光・電気・磁気特性が大きく変化することが知られています。例えば、エレクトロクロミック材料として知られるWO3は、そのままでは可視光に対して透明な絶縁体ですが、電気化学反応を利用してプロトン化する(HxWO3)ことで青色の金属に変化します。また、ブラウンミラライト型の結晶構造を有するSrCoO2.5は、磁石にならない絶縁体ですが、酸素中で加熱して酸化するか、電気化学的に酸化すると、ペロブスカイト型の結晶構造を有するSrCoO3に変化し、電気が良く流れる強磁性金属になることが知られています。このように、遷移金属酸化物をうまく利用することで、光透過率と電気伝導度、磁性と電気伝導度を切替え、記憶するデバイスが実現できると考えられます。遷移金属酸化物にとって、H+イオン(プロトン)は強力な還元剤、OHイオンは強力な酸化剤として働くので、電気化学反応を利用すれば上記デバイスは実現可能ですが、電界液などの液体を用いなければならないという課題がありました。私達の研究室では、ナノ多孔質ガラス [H. Ohta et al., Nature Communications 1, 118 (2010)] のナノ孔に自然に導入される水を電解液の代わりに使って、様々な 機能性酸化物の光・電気・磁気特性を切替えることに成功しました。(太田裕道)

総説

[1] H. Ohta, J. Mater. Sci. 48, 2797 (2013).

原著論文

[1] H. Ohta et al., Nature Commun. 1, 118 (2010). [2] H. Ohta et al., Adv. Mater. 24, 740 (2012). [3] T. Katase, H. Ohta et al., Adv. Electron. Mater. 1, 1500063 (2015). [4] T. Katase, H. Ohta et al., Adv. Electron. Mater. (2016). [5] T. Katase, H. Ohta et al., Sci. Rep. 6, 25819 (2016).

新聞・テレビ

[1] 「北大,赤外線のみをスイッチングする薄膜を開発」、月刊OPTRONICS online(2015年6月30日)
[2] 「北大が新しい記憶装置を開発」、北海道放送HBCニュース(2016年3月30日)
[3] 「電気・磁化の両方で記憶 北大・新メモリーを開発」、化学工業日報(2016年3月30日)
[4] 「北大、レーザー堆積法で電気/磁気メモリーを開発」、月刊OPTRONICS online(2016年3月31日)
[5] 「絶縁体の酸化物 電気流れる磁石に 北大電子研が成果」、科学新聞(2016年4月8日 6面)
[6] 「記憶媒体 容量2倍に 北大教授ら開発 スマホに応用可」、読売新聞(2016年4月16日 朝刊 26面 北海道版)
[7] 「窓ガラスがメモリーに?北海道大学、記憶装置を開発」、大学ジャーナルオンライン(2016年5月21日)
[8] 「北大,エレクトロクロミック表示・記憶装置を開発」、月刊OPTRONICS online(2016年5月24日)

海外での報道も含め、他多数

特殊なエピタキシャル薄膜成長方法

ガラス基板を単結晶基板に変えられます

“Surface Modification of Glass Substrate for Oxide Heteroepitaxy: Pastable Three-dimensionally Oriented Layered Oxide Thin Film”, Advanced Materials 18, 1649–1652 (2006).

複雑な層状の結晶構造を簡単に作ります

“Single-crystalline films of InGaO3(ZnO)m(m=integer) homologous phase grown by reactive solid-phase epitaxy”, Adv. Funct. Mater. 13, 139–144 (2003).

reactivesolidphaseepitaxy

高温超伝導体として知られるYBa2Cu3O7に代表されるように、多くの複合酸化物が複雑な層状の結晶構造になることが知られています。このような層状複合酸化物を原子・分子オーダー周期の超格子とみなすと、様々な興味深い物性を示すことが期待されます。単結晶薄膜は薄膜デバイスを作製するために必要不可欠ですが、層状複合酸化物の単結晶薄膜を合成することは容易ではありません。例えば、InGaO3(ZnO)m(mは自然数)単結晶薄膜を一般的な気相薄膜成長法で作製しようとしても、構成成分の蒸気圧差が大きいため、単一結晶相を得ることすらできません。そんなときにもってこいの方法が「反応性固相エピタキシャル成長(R-SPE)法」(図)です[1]。R-SPE法によって作製したInGaO3(ZnO)m単結晶薄膜は可視光領域全域で透明であり、多結晶Si-TFTに匹敵する電界効果移動度を示します[2]。また、単結晶薄膜ではありませんが、アモルファスInGaZnO4薄膜は実用化可能な薄膜トランジスタ材料として注目されています[3]。(太田裕道)

総説

[1] H. Ohta and H. Hosono, Mater. Today 7, 42 (2004). [2] H. Ohta, J. Ceram. Soc. Jpn. 114, 147 (2006).

原著論文

[1] H. Ohta et al., Adv. Funct. Mater. 13, 139 (2003). [2] K. Nomura, H. Ohta et al., Science 300, 1269 (2003). [3] K. Nomura, H. Ohta et al., Nature 432, 488 (2004). [4] H. Ohta et al., Cryst. Growth Des. 5, 25 (2005). [5] K. Sugiura, H. Ohta et al., Appl. Phys. Lett. 88, 082109 (2006). [6] H. Ohta et al., Adv. Mater. 18, 1649–1652 (2006). [7] K. Sugiura, H. Ohta et al., Appl. Phys. Lett. 89, 032111 (2006). [8] A. Mizutani, H. Ohta et al., Cryst. Growth Des. 8, 755 (2008). [9] K. Sugiura, H. Ohta et al., Appl. Phys. Lett. 94, 152105 (2009)

 

スピントロニクスデバイス

spintronics

電子の電荷とスピンの性質を利用するスピントロニクス素子を応用することにより、エレクトロニクスの低消費電力化が期待されています。私達の研究室では、スピントロニクス素子を構成する材料として機能性酸化物に注目しています。 特に、La0.67Sr0.33MnO3に代表される酸化物ハーフメタルでは伝導電子のスピン方向が揃っており、それを用いることによってスピントロニクス素子をベースとする不揮発性メモリ、不揮発性ロジック、磁気センサなどの高性能化が期待されます。また、SrTiO3/LaAlO3に代表される酸化物ヘテロ構造においては、界面に分極が誘起され、伝導電子スピンにラシュバ有効磁界が作用するものが報告されています。これらの機能性酸化物におけるスピンと電荷の性質を利用して、新しい機能を備えたスピントロニクス素子の創生をめざしています。(山ノ内路彦)