コバルト酸ナトリウムエピタキシャル薄膜の作製方法
R-SPE NaxCoO2 & related epitaxial films
NaxCoO2は熱電変換材料としての特性に優れ、水をインターカレートすることで超伝導転移(T = 4K)を示す面白い物質です。この物質の物性をきちんと調べるために、反応性固相エピタキシャル成長を応用しました。作り方はとっても簡単。サファイア基板上にCoO薄膜をエピタキシャル成長させて、これにNaHCO3粉末を被せて700℃で加熱するだけです。このようにして作製したNa0.8CoO2エピタキシャル薄膜がきっかけで、共同研究者の杉浦健二君は水和超伝導体、SrxCoO2、Ca3Co4O9の高品質エピタキシャル薄膜の作製に成功しました。さらに、NaxCoO2エピタキシャル薄膜は、厚さわずか100 nm、面積1 cm2の大きさの薄膜を水に浸すだけで綺麗に剥がすことができます。さらに、東京大学の石田博士と藤森教授、東工大の細野秀雄教授らとの共同研究では、光電子分光によりNaxCoO2の高いSeebeck係数の起源をつきとめるため、高品質エピタキシャル薄膜が活躍しました[石田博士の論文はJPSJ Papers of Editors’ Choiceに選ばれました Y. Ishida et al., JPSJ 76, 103709 (2007)]。なお、杉浦君はこれら一連の研究成果をまとめて2009年春に博士号を取得しました。日立中央研究所での更なる活躍を期待しています。