窓ガラスがメモリーに?

A transparent electrochromic metal-insulator switching device with three-terminal transistor geometry [Scientific Reports 6, 25819 (2016)]

 

「電子カーテン」として最近注目を浴びているエレクトロクロミック材料に、薄膜トランジスタ構造を適用することで、無色透明⇔黒色の色変化で情報を 表示・記憶し、同時に電気を通す⇔通さない(=電子情報)を記憶し、読み出すことが可能な、新しい情報表示・記憶装置の開発に成功しました。

1970年代からエレクトロクロミック材料として知られる酸化タングステンは、透明で、電気を通さない絶縁体ですが、電気化学的に水素を内包させる ことにより、黒色で、電気をよく通す金属になり、水素を引き抜くことで元の透明な絶縁体に戻るというエレクトロクロミズムを示します。

本研究では、酸化タングステンの透明⇔黒色の色変化に加え、絶縁体⇔金属の電気の通しやすさの変化に着目し、電気が通らない絶縁体の状態を情報 「0」、電気がよく通る金属の状態を情報「1」とすることで、視覚でとらえられる色変化の情報「透明」「黒」に加え、電気的に情報「0」と「1」を記憶・ 読み出すことができる、新しい情報表示・記憶装置の実現に向けて研究に取り組みました。本情報表示・記憶装置は、電解液を用いない固体装置であり、密封する必要がないことから、更なる微細化による高精細化が可能です。ガラス基板上に多数配置 することにより、無色透明⇔黒の色調変化を利用した、文字や絵などの情報表示が可能です。

本装置は、室温下で製造することができるので、熱に強いガラスだけではなく、熱に弱いプラスティックなどの上にも作製することが可能です。大面積化が可能なこ とから、安価に情報表示・記憶装置が製造可能です。なお、情報の表示・消去に要する時間は約10秒であり、情報表示装置としては動作がやや遅いことが課題ですが、材料や装置の構造を改良し、タッチパネル技術と組み合わせることで、真に実用的な情報表示・記憶装置が実現すると期待しています。